2011年6月23日木曜日

27才の冬、ノッポのビジネスクラス①

私は絶好調であった。何しろラウンジがもう目の前なのである。しょぼけた飲食店にぶら下がったり、いきなりゲートに押しかけてたむろしたりの民族とは、もはや流れる血からして全く異なる存在である。一体全体どうして彼等はビジネスクラスに乗らないのかしら。不思議。広い席とか、手厚いサービスとか、ラウンジでの飲み食い放題に興味がない人種がいるなんて。それどころかあんなにいぎたなく眠り込んだり、大声で話したり。ほんとエコノミーさんたらおかしいの! いっそのこと全員丸ごとミンチにして昼飯にでも出したらどう? ビーフorヒューマン? なんちて。 エコノミーヒューマン? なんちて。それで全然人気無いの。牛以下。エコノミーさん牛以下。それより職員! もっと俺に微笑め。そしてアナウンス! ビジネスクラスのお客様はお先にご搭乗ってやつをもういっぺん繰り返せ。空港は人を階層化するという事実を、今が前面に押し出す時なのだ。ラウンジの自動ドアがずずっと開く。俺は今この世界に。上気した頬を受付姉ちゃんに気付かれないよう、内ポケットからゆっくりとチケットを取り出すのだった。

実りのひとときを終えてゲートへ。ラウンジでの飲食があれほど充実しているとは。危うく差額を食い尽くす勢いであった。ゲートは再びの人種混濁。どうにか着席。このいっしょくたな人達と僕は違うんだよ、ということを分かってもらうため、不必要に仕事の資料を取り出すなど神経を払う。それにしてもこの雑踏やいかに。段々とファースト、ビジネス、エコノミーなどというマイルドな区分で隔たられたくないという気持ちになってくる。確かに私は本日はじめてのビジネスクラスにウフウフしており、ビジネスというその響きに誇らしいものを感じていたが、考えてみたらこんな漠然とした名前もない。あくまで便宜上の区分であって、価値観と機会に応じてお客様の方で使い分けていただいております、という言い訳がある。どうして正直に貴族席、騎士席、平民席、といかないのか。何故なら俺は騎士。ぶよぶよ太った貴族なぞにはなりたくはないと、愛馬ボーイングに跨って、ワールドワイドなビジネスシーンで連戦連勝のおしゃれ騎士。そういうわけで平民、ちょっと通させてもらってもいい? 聞こえたろ? 俺、ご搭乗下さいの呼出かかっちゃった。鞄がぶつかったとしてもそれはあくまで194cmの身長のせいであって、いつもより心持ち高慢ちきになってるせいじゃないと、多分思うよ。

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