2011年7月15日金曜日

34才 ソックスマンの出張

皆さんに全くもって使いようがない情報をお伝えしよう。ノッポの出張は荷物が多い! イエス! ハイタッチ! 
まずパソコン。甘く見て貰っては困る。こちとらPは薬指で押す指長族だ。ちまたのコンパクトサイズなんざ、シュローダーがピアノ弾いてるみたいでちゃんちゃらおかしい (1参照)。まともに仕事をするならば、最低限B4サイズとなる。ドカベンの弁当箱みたいなノートPCをカバンから厳かに取り出す瞬間、私は自らのノッポを激しく自覚するのだ(図2参照)。

1194cmが小型ノートPCをつま弾いてちゃんちゃらおかしい



2:ノッポがノートPCを取り出す様を見事に表現する水島新司先生
(ドカベン第一話)

続いて寝具。ホテル備え付けの浴衣で済ます選択肢は無い。つんつるてんとかいうレベルではないのだ。なにかこう、浴衣をミニスカート風に着こなすお姉ちゃん、という出で立ち。腰に手を当ててウフン。強烈な自己嫌悪。でも着るとやらずにはいられない。さらに実際的な問題として風邪も引く。かくてスウェット上下がカバンへ。これがまた古代人が見付けたら奉納するぐらい雄々しい。194cmもあると人生変わるでしょ? と問う人に今こそお答えしよう。確かに変わる。具体的にはスウェットをカバンに入れたり出したりする方向にだが、あなたはそれに興味があるのかと。

3:古代人が奉納したと思われるスウェット(下)
奥にあるシーツらしきものと比較すると雄々しさがより鮮明に。

最後にパンツと靴下。12日まではそのままだという猛者ぶった奴もいるが、そんなのに限って「最悪コンビニで買えばいい」という世渡りがある。服をその辺で買って済ますという、低身長族特有の世渡り。私は違う。この一枚もし難事あらば、自宅までノーパンで過ごすのみ。清冽な覚悟で日々に対峙しているのだ。ただし、そういうスースーの事態は避けたいよねーという親しみ易いキャラでもあるので、出張準備はパンツ靴下の押し込み作業で締めくくられる。これがまた子供のタオルぐらいにはでかい。私のカバンが一部ぼこっと膨れ上がっていたとしても、中身は柔らかいので安心していただきたいのである。

とある出張。12日。破裂しそうなカバンを抱えて新幹線下車颯爽。もちろんグリーン車。でもそれはまた別の話だ。夜中まで宴席。ホテルに戻って、もう若くない自分。194cmの棺桶ってやっぱ特注かしらと思いつつ、スーツだけ死力で脱いでベッドへ。そのままお休みヤスシ。
翌朝。復活。俺まだ若い。シャワー。ますます生気漲る。こりゃもう棺桶は中止ですよ!えー、シークレットブーツに変更! 俺、2mになるわ! ツーエム! ていうかツーエム! 身長伸びるとサクセスが手に入るんだろ? そんで引っ込み思案だった性格も明るく前向きに変わるんだろ? 伸ばしてやるよ! あと6cmをよ! 心持ち踵も上げてツーエム気分。絶好調でシャワー終了。髪の毛拭きつつ「シークレットブーツ一丁! サイズ29cmで!」と頼む練習。ホントに在庫あったらどうしよう。で、パンツ持ってくんの忘れたのが現実。

さぁどうする。このツーエムな朝に、30時間連続着用パンツの再利用は避けたい。それではワンエム時代に逆戻りではないか。かといって今日一日ノーパンのスースーがツーエムスタイルかというと、それもゴメン被りたい。34才の秋、素っ裸でホテルの一室。右の手に、こちらは忘れなかった靴下一足。心中にやってみたいこと一つ。呼んでみなよ。正義の味方をさ。僕等のソックスマンをさ。そこだけそっとかぶせて残りは全開のナイスガイをさ。いいじゃん、それはツーエムの自分がやったってことなんだよ。

姿見には、たるんだ腹の194cmソックスマン。高さの関係上、カメラフレームに入るのは首まで。存外保たれる匿名性。194cmの運命が、僕をソックスマンにした。ストーリーに深みをもたせる宿命性。津々浦々パンツ忘れサラリーマンを救う優しき男。明日はあなたがの大衆性。そんなもん靴下じゃなくてパンツ持ってこいよ! 一筋の謎と不条理性。次々とヒーローとしての輪郭が際立ってくる。もう一度姿見。人生で有数に無駄な時間を過ごしたことにやっと気づく。いいよ、もうスースーで。それより早く行かなきゃ。でもその前に、昨晩も大活躍だった即席クイズ大会用のホワイトボードセットを片付けて。あとこないだ勢いで買ったキーホルダー。この超人ハルクのくそでかい奴。鍵どころか携帯よりもでかい奴。これもしまわないと。さらに昨日駅の土産屋で見つけた、リンゴの皮むきと八つ切りが一発で出来るグッズ。一夜明けて眺めても、俺に購入を抗う術は無かった。これ見て、費用対効果がどうのなんて考える人間に生まれなくて良かった。が、それとは別にどうやって持って帰ろう。いっそハルクに持たせようか。いやいやここは、こないだ買ったままになってる折り畳み式買物袋の出番ではないだろうか。
つまりそういうわけで、ノッポの出張は荷物が多くなるのである。イエス。

※「ソックスマン」は、私の敬愛するYちゃんが開発したものです。心優しきYちゃんのどこにソックスマンとしての潜在能力が眠っていたのか。私は人間の奥深さを感じるのです。

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